月9ドラマ『明日はもっと、いい日になる』第9話は、物語のクライマックスに向けた重要な回。
これまで子どもや親を支えてきた主人公・夏井翼の“支援者としての限界”と“心の傷”が描かれます。
支援者もまた、人として悩み、傷つき、誰かに支えられる存在であること――。
この記事では、第9話のネタバレと共に、支援者という立場の苦悩と再起、そして人と人の支え合いのかたちを丁寧に解説します。
この記事を読むとわかること
- 支援者・翼が抱えていた過去と限界
- こどもからの言葉に救われる感動の展開
- 「支援者も支えられていい」という新たな気づき
児相内で起きた判断ミス…翼が責任を問われる
第9話は、ある緊急支援案件をめぐる混乱から始まります。
こどもの保護タイミングがわずかに遅れ、状況が悪化してしまったことをきっかけに、翼の判断ミスが職場内で問題視されることになります。
児童相談所内にはピリピリとした空気が漂い、翼は孤立感を深めていきます。
「あなたの対応が遅れを招いた」職場内での衝突
今回の案件は、家庭内でのネグレクトが疑われたケース。
翼は「保護の必要はあるが、強制的な介入は時期尚早」と判断し、家庭との協議を優先しました。
しかし、そのわずかな時間差で、こどもが体調を崩し入院。
「もっと早く動いていれば」という声が、同僚からも上司からも漏れるようになります。
「支援の現場で、結果だけを見られるのは本当に辛い」
翼の心には、判断への迷いと、孤独が積もっていきます。
支援の正しさと“結果”との板挟み
この出来事は、翼に「支援とは何か」を突きつけるものとなります。
「相手の意志を尊重すること」と、「こどもの安全を最優先にすること」。
そのバランスが、ほんの数時間で裏目に出てしまった。
「正しいつもりだった」が通じない現実に、翼は心をすり減らしていきます。
蔵田は冷静にこう言います。
「支援は、必ずしも“正しさ”で評価されるわけじゃない。結果がついてこなければ、批判される」
その言葉は厳しい現実を突きつける一方で、支援者としての覚悟を改めて問うものでした。
翼が抱えていた“誰にも言えなかった過去”
責任を問われ、心が揺れる中で、翼はふと過去を語り出します。
これまで明かされることのなかった、児童相談所への出向辞令が下された「本当の理由」が、初めて描かれます。
それは、警察官時代のある“判断”に関するものでした。
児相に出向になった本当の理由が明かされる
翼は刑事だった当時、ある家庭内暴力の通報を受けながらも、
「証拠不十分」「家庭の事情が複雑」として介入を見送った経験があったのです。
数日後、その家庭で重大な事件が発生。
翼は、自らの判断が一人の子どもを守れなかったと、深く悔やみました。
「あのとき私が踏み込んでいれば、救えたかもしれなかった」
この出来事がきっかけとなり、警察内での進路を絶たれ、児相へ出向となったのです。
「あのとき、私は間違えたかもしれない」
翼は初めて蔵田の前で、声を震わせながら自責の念を語ります。
「支援者として正しいことをしていると思っていた。でも、あのときも、今も、私はどこかで“信じ切れなかった”」
こどもの声を信じきれなかった自分。
そして今また、判断の遅れを責められている。
この二重のトラウマが、翼の胸を深く締めつけていたのです。
蔵田は、そんな彼女の言葉を黙って聞きながら、一言だけ返します。
「お前は逃げてない。だから、今ここにいるんだ」
その言葉に、翼はようやく少しだけ肩の力を抜きます。
蔵田との衝突と、はじめての本音
今回の出来事をめぐり、翼と蔵田の間にも緊張が走ります。
特に会議の場で蔵田が「判断ミスが二次被害を招いた可能性がある」と言及したことが、翼には強く響いていました。
それは指摘というより、追い詰める言葉に聞こえたからです。
「支援者だって迷うし、逃げたくなる」
「正直、もう誰かに代わってほしいって思った。私が向いてないんじゃないかって……」
翼は、蔵田に対して初めて弱音を吐きました。
それは支援者としてではなく、一人の人間としての叫びでした。
蔵田は少し黙った後、静かに語ります。
「俺だって、毎回“これで良かったのか”って思ってる。支援者は迷うんだ。だから支援なんだよ」
その言葉に、翼の目から自然と涙がこぼれます。
「蔵田さんって、もっと冷たいと思ってた」
「お前が暑苦しいだけだ」
そんな軽口が交わされるのは、初めてのことでした。
ぶつかり合って見えた“仲間としての信頼”
二人は、お互いの価値観の違いに衝突しながらも、今ようやく“支援者同士”という関係から一歩深まりました。
それは、“同じ痛みを知る者同士”だからこそ生まれる信頼です。
蔵田は最後にこう付け加えます。
「支援者に必要なのは、ブレないことじゃない。迷っても戻ってこれる“人間らしさ”だ」
支援者もまた、揺れて、傷つきながら、それでも誰かに手を伸ばす存在。
この回では、そんな“支援者のリアル”が、丁寧に描かれました。
翼が涙の面談…こどもに救われた一言
事件の渦中で、翼はあるこどもと1対1の面談に臨みます。
それは、以前から継続的に支援してきた小学5年生の女の子・陽菜。
家庭環境は依然として不安定ながら、陽菜は少しずつ心を開いてきている子どもでした。
しかしこの日、いつもとは違い、翼のほうが落ち込んでいる様子を隠せていませんでした。
「先生、疲れてるの?」—支援者とこどもの逆転
陽菜は、翼の表情をじっと見つめてから、ぽつりと聞きます。
「先生、疲れてるの?」
その瞬間、翼は堪えていたものが一気に崩れ、思わず涙をこぼしてしまいます。
「ごめんね、先生なのに、泣いちゃって……」
しかし陽菜は、すぐにこう言います。
「先生は、わたしのこと助けてくれたんだから、わたしも先生のこと助けたい」
こどもが支援者を励ますという“立場の逆転”が、静かな感動を呼ぶ瞬間でした。
その一言が、翼をもう一度立ち上がらせた
この陽菜の言葉は、翼の中に灯をともしました。
「支援って、片側だけが与えるものじゃない。支援者もまた、こどもたちから力をもらってるんだ」
それを実感した翼は、また歩き出す勇気を取り戻していきます。
面談の最後、翼は陽菜に微笑みながらこう言います。
「ありがとう。先生、もうちょっと頑張れる気がしてきた」
支援の現場において、こどもの力がいかに大きいかを伝える、象徴的な場面となりました。
支援者も“支えられていい”と気づいた日
面談を終えた夜、翼は児相の事務所でひとり、陽菜のノートを見返していました。
そこには、以前書かれていた言葉がありました。
「先生がいてくれて、安心した」
翼は、その言葉に背中を押されるように、涙ぐみながら深く息を吐きます。
「ひとりで抱えるな」という蔵田の言葉
そこへ、蔵田が何も言わずにお茶を置いて去っていきます。
すると、その湯呑みの下にはメモが。
「支援者も、支えられていい」
蔵田のぶっきらぼうな優しさに、翼はふと笑顔をこぼします。
「私は、全部一人で背負おうとしてたのかもしれない」
そう呟いた彼女の顔には、ようやく自分を許したような安堵の色が浮かんでいました。
支援の意味を、自分自身にも向ける勇気
支援者という立場にあることで、翼はいつも“強くいなければならない”と思い込んでいました。
でも実際には、支援者もまた「助けて」と言っていい存在なのだと、今になって気づかされます。
翌日、児相のチームミーティングで翼はこう語ります。
「私、少し疲れてました。だから、もうちょっとだけ、助けてもらってもいいですか?」
仲間たちは微笑んで頷きます。
それは、“支援する側”が“支援される側”にもなれることを肯定するシーンでした。
「明日はもっと、いい日になる」
その言葉が、ようやく翼自身にも優しく届いた瞬間でした。
この記事のまとめ
- 翼が判断ミスと過去のトラウマに向き合う
- 支援者の迷いと限界が描かれる重厚な回
- 蔵田との本音のぶつかり合いが信頼を深める
- こどもの一言が翼を救い、支援の本質を照らす
- 「支援者も支えられていい」という優しい答え
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