ドラマ『舟を編む』第5話では、辞書「大渡海」の中核部分である“見出し語の選定”が本格化。
「どの言葉を載せるか」「どこまで収録するか」をめぐって、編集部内でも価値観の違いが浮き彫りになります。
この記事では、第5話のネタバレを交えつつ、辞書編集における“言葉の取捨選択”の難しさと、それを通じて描かれる人間関係の変化を詳しく解説します。
この記事を読むとわかること
- ドラマ『舟を編む』第5話のネタバレと見どころ
- 辞書の見出し語選定をめぐる哲学的な葛藤
- みどり・馬締・松本それぞれの言葉への向き合い方
ドラマ『舟を編む』第5話ネタバレ:見出し語の選定が始まる!収録基準の葛藤
第5話では、辞書「大渡海」の中でも重要な工程である“見出し語の選定”がいよいよ本格的に始まります。
編集部員たちは、無数に存在する日本語の中から「何を辞書に載せ、何を載せないか」を一語一語検討していきます。
辞書の骨格を決めるこの作業は、単なる言葉の収集ではなく、辞書の“思想”そのものを問う工程です。
見出し語の選定作業は、辞書編集部にとって最大の山場のひとつ。
収録語数には限りがあり、かといって削りすぎると“今の日本語”を反映できない──
言葉の取捨選択は、言葉そのものへの哲学を問う作業でもあります。
「残す言葉」と「切る言葉」の判断基準とは
見出し語を選ぶ際、最も難しいのが“掲載の基準”をどう設定するかという点です。
ある言葉は日常でよく使われるが、正式な文献にはほとんど登場しない。
また、ある言葉は古語だが、文学作品や歴史的背景を知るうえで必要不可欠──。
編集会議では、「“わんちゃん”はどうする?」「“ググる”は?」といった現代的な言葉をめぐる議論が交わされます。
日常で使われていること=辞書に載せる価値があるのかという問いが、編集部全体を包み込みます。
最終的には、意味の明確さ・使用頻度・社会的定着度の3点を軸に選定することが決まりますが、それでもグレーゾーンの言葉は多く残ります。
この葛藤こそが、辞書作りが“ただの編集作業ではない”ことを象徴しているのです。
辞書は誰のためのものか?をめぐる議論
語の選定基準をめぐる議論のなかで、浮かび上がるもうひとつの問い。
それは「辞書は誰のために作るのか?」という本質的な問題です。
専門家のためか、学生のためか、日常使いの人のためか──ターゲットによって語彙の選び方は大きく変わります。
馬締は「ことばに迷ったとき、辞書がそっと寄り添ってくれるような存在にしたい」と語ります。
一方、天童は「迷ってる人に選択肢を与えるなら、収録語数は可能な限り多い方がいい」と主張。
みどりはその中間に立ち、「読んで“気づける”辞書にしたい」と、思いを言葉にします。
このやり取りは、それぞれの立場や辞書観が反映されたシーンであり、辞書の本質が「単語の集積ではなく、人の知識と感情の地図」であることを示しています。
ドラマ『舟を編む』第5話ネタバレ:みどりが直面する“言葉の温度差”
第5話では、岸辺みどりが「辞書に載せる言葉」を見極める中で、“言葉の温度差”という課題にぶつかります。
自分では自然に使っている語でも、年配の編集部員には理解されず、「こんな言葉を載せていいのか?」と疑問を投げかけられる。
世代間・価値観の違いが言葉に如実に現れるなか、みどりは編集者としての姿勢を問われることになります。
このエピソードは、辞書という媒体が“時代を記録するもの”であると同時に、“時代を超えるもの”でもあるという、複雑な使命を持っていることを描いています。
「便利」や「エモい」は載せるべき?
ある日の編集会議で、みどりが提案したのは「便利」や「エモい」といった、若者言葉や曖昧な語感をもつ言葉。
これに対して、荒木は「意味が定まらない言葉は辞書に向かない」と一刀両断。
しかし、みどりは「でも、みんな使っているし、“わかる”と思ってる」と食い下がります。
このやり取りから浮かび上がるのは、「使われている=意味がある」という視点と、「定義できなければ載せられない」という原則のぶつかり合いです。
辞書とは何か、言葉とは何かを突き詰めていくと、編集者自身の言葉への立ち位置が問われてくるのです。
最終的に馬締は「語釈の工夫次第では、載せられる可能性がある」とみどりに助言。
この瞬間、みどりは「編集者として、言葉に寄り添いながら形を与える」ことの意味を深く実感するのでした。
時代と共に変わる言葉にどう向き合うか
みどりが直面したもうひとつの問いは、「言葉は時代によって変わるものなのに、辞書はどこまでそれを反映すべきか」ということ。
過去の辞書を引いても、“今”の言葉がないことに気づいたみどりは、「辞書って、昔を記録するだけでなく、“今”を刻むものでもあるべきだ」と考え始めます。
しかし、編集部には「新しい言葉を載せることで、軽くなるのでは」という懸念も存在。
この葛藤の中で、みどりは「言葉には温度がある。人によって“熱く”も“冷たく”も感じる」と語り、自分なりの視点を見つけていきます。
辞書は中立であるべき──でも、使う人はそれぞれ違う。
この難問を前に、みどりは辞書という“道具”に、感情や体温を与えるような編集者へと変わりつつあるのです。
ドラマ『舟を編む』第5話ネタバレ:馬締と松本の静かな対立
第5話では、辞書「大渡海」の監修者・松本と、主任編集者・馬締の間に静かな意見の食い違いが生まれる展開が描かれます。
普段は穏やかで、言葉を交わすことも少ない二人ですが、辞書という“哲学”の詰まった書物を作るにあたり、そのアプローチの違いが明確になります。
信頼し合いながらも、決して同じ道を見ていない──そんな緊張感が編集部内に静かに広がっていきます。
語彙数重視か、質の厳選か
松本は「この辞書を、後世に残る『記録』にしたい」と語り、可能な限り多くの語彙を収録すべきだという立場を取ります。
その姿勢は、日本語学者としての知的好奇心と、“言葉を網羅する”という責任感から来るものでした。
一方で馬締は、「あまりにも多くを入れると、辞書の軸がぶれる」と主張します。
「使う人が迷わずに言葉に出会えるよう、本当に必要な言葉だけを残すべきではないか」──それが彼の信念です。
どちらも間違っていない。しかし、両立が難しい。
この対立は、辞書というプロダクトが「学術」と「実用」のはざまで揺れる象徴的な問題を投げかけています。
辞書作りにおける信念のすれ違い
馬締と松本の間に感情的な衝突はありません。
しかし、語の選定を巡る議論の中で、みどりは二人の“譲れない軸”の違いに気づき始めます。
松本は、辞書が未来の研究者にも使われることを想定しており、「研究の礎となるべき」という使命感を持っています。
一方の馬締は、「言葉に迷った“誰か一人”に寄り添う辞書を作りたい」と語ります。
彼の辞書観は、“人の感情”や“孤独”に焦点を当てたものであり、それは香具矢との過去にも深く根ざしています。
この二人の信念が静かにすれ違うことで、「辞書とは何か」「辞書は誰のためにあるのか」という根源的な問いが視聴者に投げかけられます。
それぞれの立場が、辞書という舟の“進行方向”に微妙なずれを生んでいく──。
そのズレが、この後の展開でどのような意味を持つのか、緊張感が増していく回となりました。
ドラマ『舟を編む』第5話ネタバレ:香具矢との会話で見えた“ことばの本質”
第5話の後半、岸辺みどりは再び香具矢の小料理屋「月の裏」を訪ねます。
辞書の編集作業が進む中で感じていた葛藤──「言葉って、どうしてこんなに難しいのか?」という問いに対し、香具矢との会話がやわらかい光を当ててくれます。
華やかな職場の喧騒から離れた場所で語られる、言葉と人の距離感。
料理人である香具矢ならではの、日常に根ざした視点が、みどりの迷いを解いていきます。
「言葉にできること」と「できないこと」
みどりは「辞書に載せる言葉と載せない言葉の線引きがわからなくなってきた」とこぼします。
すると香具矢は、黙って出していた料理の一品を差し出し、「これ、美味しいって言葉で言える?」と尋ねます。
その問いに、みどりはしばらく沈黙したのち、「……言えないです」と答えます。
香具矢は笑いながら「じゃあ、全部言葉にしなくてもいいのかもね」と返すのです。
“言葉にできない感覚”があるという前提に立つことで、辞書作りの役割も見えてくる──このやりとりは、視聴者にとっても深い気づきを与える場面でした。
日常会話から学ぶ言葉の本来の意味
その後、香具矢は「“ありがたい”って、料理の世界でもよく使うけど、あれって辞書でどう説明してるの?」と尋ねます。
みどりはすぐに答えられず、馬締が以前言っていた「語釈は心で感じるものも含まれている」という言葉を思い出します。
辞書が“正確さ”を重視するあまり、“実際に人がどう使っているか”という生の言葉から離れてしまっていないか──。
香具矢との会話を通じて、みどりは辞書の存在意義そのものを見直していくことになります。
「使われている場所を想像できる言葉が、いい語釈になる」
そう語る香具矢の言葉には、長年人と向き合ってきた料理人ならではの、“人に届ける”という本質がにじんでいました。
この時間を経て、みどりは「語釈とは、定義じゃなく“共感のかけ橋”なのかもしれない」と静かに理解し始めます。
それは、辞書に“ぬくもり”を吹き込むための、大きな一歩でした。
舟を編むドラマ第5話ネタバレと感想のまとめ
第5話は、「見出し語の選定」という辞書作りの根幹に迫る回でした。
一つの言葉を収録するかどうか──その判断には明確な正解がなく、編集者の哲学や視点が色濃く反映される作業です。
そしてその葛藤は、視聴者にも「言葉とは何か」「辞書は誰のためのものか」という問いを静かに投げかけてきました。
大きな事件やドラマチックな展開があるわけではない。
けれど、言葉と向き合うという日々の営みの中に、深くて繊細なドラマが確かに息づいていました。
辞書編集の裏にある静かなドラマ
本作の魅力は、編集作業という地味な工程を丁寧に描きながら、その裏にある人間の葛藤や成長を浮かび上がらせる点にあります。
第5話では、編集部それぞれの立場──松本の学者的視点、馬締の感情への寄り添い、みどりの現代的感覚──が交差し、言葉の奥深さが際立ちました。
“辞書は言葉を記録するもの”であると同時に、“誰かの孤独に寄り添う本”でもある。
その二面性を視覚化するような、美しくも静かな物語が展開されました。
言葉と人をつなぐ“選ぶ”という行為の重み
今回のキーワードは、まさに「選ぶこと」。
言葉を選ぶ、定義を選ぶ、語釈を選ぶ──そのすべてが、「誰かに伝えるための行為」だということを、この回は優しく教えてくれました。
香具矢との会話や、みどりの悩み、天童の苦悩。
それぞれが言葉を“選び取る”中で、人と人との間にある“伝わる”という奇跡を紡ぎ出していきます。
辞書という舟が少しずつ形になっていくなか、関わる人々もまた、言葉を通して心を通わせていく──。
そんな静かな感動が詰まった第5話でした。
次回、第6話ではいよいよ編集部に変化の兆しが訪れる予感も。
今後の展開にも期待が高まります。
この記事のまとめ
- 見出し語の選定を通して「言葉の重み」に迫る回
- 馬締と松本の哲学の違いが表面化する静かな対立
- 香具矢との会話でみどりが見出す“共感”の語釈観
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