NHKドラマ『舟を編む』は、一冊の辞書を編む人々の静かな奮闘を描いた感動作として、多くの共感を集めました。
視聴者の間では「この話は実話なの?」「モデルになった人物はいるの?」といった疑問も多く見られます。
この記事では、ドラマや原作小説に登場する辞書編集部や登場人物に、どのような実在の背景やモデルがあるのかを解説。さらに辞書作りのリアルな現場や原作者・三浦しをんの取材背景まで、深掘りしていきます。
この記事を読むとわかること
- 『舟を編む』が実話に基づいているかどうか
- 辞書「大渡海」や出版社「玄武書房」のモデルとなった現実の存在
- 登場人物に実在の人物がいるのか
- 原作者・三浦しをん氏が込めた取材と想い
- 辞書作りという仕事のリアルな過酷さと美しさ
ドラマ『舟を編む』は実話なのか?フィクションなのか?
ドラマ『舟を編む』を観た視聴者の多くが、「この話は実話なの?」と感じたのではないでしょうか。
それもそのはず、この作品には現実の辞書編集の現場を彷彿とさせるリアリティがあるからです。
実際のところ、『舟を編む』は完全なフィクションでありながら、綿密な取材をもとに書かれた“限りなく現実に近い物語”です。
原作小説は完全なフィクションだが、綿密な取材がベース
『舟を編む』は、作家・三浦しをんによる小説が原作です。
この作品自体はフィクションですが、三浦しをん氏が実際に辞書編集部を訪ね、数々の編集者にインタビューを重ねたうえで執筆されたものです。
そのため、登場人物の仕事風景や会話のテンポ、用語や用例カードの扱い方など、現実の辞書制作に極めて近い描写がなされています。
“作り物”というより“記録”に近いと感じる読者が多いのも納得です。
辞書編集という仕事の実態がリアルすぎる理由
辞書編集の仕事といえば、一般的にはあまり知られていませんが、本作では言葉を収集し、定義を決め、校正を重ねるという過程が、リアルで緻密に描かれています。
1冊の辞書を編むために10年以上かけるという事実や、用例カードに日々言葉を書きためる地道な作業は、フィクションとは思えないほどの説得力があります。
これらはすべて、著者が複数の出版社や辞書編集部を丁寧に取材した成果であり、作品全体に“実話らしさ”がにじみ出る理由となっています。
ドラマ『舟を編む』のモデルとなった辞書と出版社とは?
『舟を編む』に登場する辞書「大渡海(だいとかい)」や出版社「玄武書房」は架空の存在ですが、明確に“モデルとなった現実の辞書・出版社”が存在すると考えられています。
ドラマや原作小説に込められた描写の細かさや名称のニュアンスから、多くの読者・視聴者がそのルーツを推測しています。
「大渡海」は『広辞苑』や『大辞林』がベース?
作中で描かれる「大渡海」という中型国語辞典は、新たな世代に向けて10年以上かけて編集される大規模な辞書として描かれています。
この設定から、多くの人がモデルとして挙げているのが岩波書店の『広辞苑』や三省堂の『大辞林』です。
特に『広辞苑』は実際に複数年かけて編集される大辞典であり、そのプロジェクトの規模や文化的役割が、「大渡海」の設定と非常に近いのです。
“言葉の海を渡る舟”というコンセプトも、『広辞苑』の象徴性を意識したネーミングだと見る向きもあります。
舞台の出版社「玄武書房」のモデルは?
作中の出版社「玄武書房」も架空の企業名ですが、モデルになっているのは“新潮社”だと広く言われています。
これは、原作が新潮社から出版されていること、また実際に三浦しをん氏が新潮社の辞書編集部に取材を行ったことが根拠となっています。
辞書制作のリアルな描写はもちろん、編集部員の性格や働き方にも新潮社独特の社風が反映されていると感じた読者も多いようです。
あくまで創作ながら、現実の出版社や辞典に通じる“リアルさ”が随所にちりばめられているのが、この作品の魅力のひとつです。
ドラマ『舟を編む』の登場人物に実在のモデルはいるのか?
『舟を編む』の魅力のひとつは、登場人物たちのリアリティある描写です。
特に馬締や岸辺みどりといった主要キャラクターについて、「本当に実在する人物がモデルなのでは?」と感じた視聴者・読者も多いのではないでしょうか。
実際には明確なモデル人物はいないものの、複数の辞書編集者の経験や人柄をミックスして構築されたキャラクターであるとされています。
馬締光也のキャラクター造形と実在する編集者たち
馬締光也は、寡黙で真面目、そして“言葉”に対して異常なほど誠実な辞書編集者です。
このキャラクターには三浦しをん氏が取材した実在の編集者たちの要素が多数反映されていると、原作のあとがきなどでも語られています。
取材の中で出会った「会話が苦手だけど、言葉には異様にこだわる人物」や、「用例カードを一生懸命に集める職人気質の編集者」が、馬締像のベースとなったようです。
つまり馬締は、一人の実在モデルではなく、複数のリアルな編集者の“魂”を宿したキャラクターなのです。
岸辺みどりの視点は“読者の代表”として創作された
原作小説では馬締が主人公ですが、NHKドラマ版では岸辺みどりの視点で物語が語られます。
このキャラクターには明確な実在モデルはいませんが、「辞書に詳しくない普通の社会人」の視点から、辞書作りの世界に触れていく存在として設計されています。
つまり、視聴者や読者が“自分を重ねられる存在”として機能するよう作られたキャラクターなのです。
彼女の驚きや戸惑い、そして変化を通して、私たちも言葉の世界に引き込まれていく――そんな仕掛けが岸辺みどりには込められています。
ドラマ『舟を編む』の原作者・三浦しをんが語る「辞書愛」と取材の裏側
『舟を編む』という物語は、作家・三浦しをん氏の辞書編集という仕事への敬意と好奇心から生まれました。
フィクションでありながら、まるでドキュメンタリーのようなリアルさを持つ本作には、綿密な現地取材と作者自身の“言葉への愛情”が詰まっています。
辞書編集部への取材で感じた“情熱と忍耐”
三浦しをん氏は『舟を編む』の執筆にあたり、実際に辞書編集部を訪れ、現場で働く人々の声を聞きました。
その中で最も印象に残ったのが、「一つの言葉に何年も向き合う」という編集者たちの根気と情熱だったそうです。
日々積み重ねられる用例カード、議論に明け暮れる日々、校正と修正の繰り返し――その粘り強さに、強く心を動かされたと語っています。
「この人たちは、ほんとうに“舟を編んでいる”のだ」と感じた経験が、物語の軸となったのです。
「言葉は人をつなぐ」というテーマに込めた思い
作中では、「言葉は誰かを傷つけるためではなく、誰かを守り、誰かとつながるためにある」という言葉が繰り返し登場します。
これはまさに、三浦しをん氏が取材を通じて得た実感であり、この物語に込めた最も大切なメッセージです。
言葉が曖昧に使われがちな時代に、ひとつひとつの言葉を正しく、丁寧に届けようとする辞書編集者の姿に、「言葉の本当の意味とは何か」を問い直す力があると語っています。
その“辞書愛”と“人間愛”こそが、『舟を編む』という作品の根幹を支えているのです。
辞書作りという仕事が持つドラマ『舟を編む』のリアルな重み
ドラマ『舟を編む』で描かれる辞書編集の世界は、決して誇張ではなく、現実の辞書作りがいかに壮大で、地道で、根気のいる仕事であるかを忠実に表現しています。
一冊の辞書を作り上げるまでにかかる年月や情熱は、視聴者や読者の想像をはるかに超えているのです。
10年単位のプロジェクトに人生をかける覚悟
辞書編集の現場では、ひとつの辞書を完成させるのに10年以上かかるのは決して珍しいことではありません。
その間、言葉を収集し、定義し、用例を整理し、校正と確認を繰り返す――この作業の連続です。
何千もの言葉に正確で納得のいく意味を与えるため、編集者たちは一語一語と真剣に向き合う必要があります。
その膨大な作業量と地道な積み重ねが、「辞書は一人の作家の作品ではなく、編集部全員の人生が詰まった一冊」ともいえる所以です。
“ことばの海”を航海するような作業の日々
三浦しをん氏が「辞書作りは舟を編んで大海を渡ることに似ている」と語ったように、辞書編集の仕事はまさに“航海”にたとえられるべきものです。
日々変化する日本語に向き合いながら、「言葉をどう定義するか」という終わりのない問いに立ち向かう作業は、知的でありながら精神的にも非常にタフな仕事です。
それでも彼らが続けるのは、「誰かにとって必要な言葉を届けたい」という使命感ゆえ。
その姿に胸を打たれた視聴者が、『舟を編む』に“リアルな感動”を感じる理由のひとつとなっています。
ドラマ『舟を編む』は“実話のような”リアリティで心を打つ
『舟を編む』は実話をもとにした物語ではありませんが、多くの視聴者が「これは本当にあった話なのでは?」と感じるほどのリアリティと人間味に満ちています。
それは、原作者・三浦しをん氏の綿密な取材と、辞書作りに携わる人々への深い敬意が、作品の隅々にまで息づいているからです。
フィクションでありながらも、現実に確かに“存在する仕事”と“存在する情熱”を描き切っていることが、このドラマを特別なものにしています。
実話ではないが、“リアルすぎるフィクション”
作中の人物も、辞書も、出版社も、あくまで架空の存在です。
しかし、その中に描かれる人間の感情や、仕事への誇り、仲間との絆は、実在の辞書編集者たちの姿と完全に重なるものです。
「現実にあってもおかしくない」と感じるほどの精度で作り込まれたフィクションだからこそ、視聴者の心に深く響くのです。
言葉と向き合う姿勢は現実に存在する人々の証
『舟を編む』が描くのは、“言葉”と真剣に向き合い続ける人々の物語です。
これはフィクションであっても、現実の世界でも、誰かが日々“正しい言葉”を届けようと努力しているという事実の写し鏡でもあります。
ドラマを観終えたあと、辞書に手を伸ばしたくなる人が多いのは、そんな誠実な想いに触れた証拠です。
“実話ではないのに、現実よりもリアル”――それこそが『舟を編む』が人の心を打つ最大の理由なのかもしれません。
この記事のまとめ
- 『舟を編む』は実話ではないが、綿密な取材に基づくリアルなフィクション
- 辞書「大渡海」のモデルは『広辞苑』や『大辞林』、出版社「玄武書房」は新潮社がベースと推測される
- 登場人物は複数の実在編集者の要素を取り入れた創作キャラクター
- 原作者・三浦しをん氏の辞書編集者への敬意が物語に深みを与えている
- 辞書作りという仕事の重みと情熱が、フィクションを“現実以上にリアル”にしている
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